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私の授業 ―合意形成技法演習T―

金谷健
環境計画学科
環境社会計画専攻

1. はじめに

 私が単独で担当している授業は、環境統計学U、合意形成技法演習T、廃棄物管理論の3つであるが、これらのうちで内容が最も知られていないと思われる「合意形成技法演習T」について、以下に記す。なお「合意形成技法」という名称であるが、内容的には「合意形成支援技法」である。

2. 演習の目的及び対象とした技法

 大多数の学生が、技法を実際に使えるようにすることを目的とした。そこで対象技法は次の2つに絞り、1つの技法に費やす時間を多くした。

1)AHP

 AHP(階層化意志決定法;Analytic Hierarchy Process )とは、
  @問題の階層構造化(問題―評価基準(複数)―選択肢(複数))、
  A問題に対する評価基準の重みづけ
  B評価基準に対する選択肢の重みづけ
  C以上に基づく、選択肢の決定
という手順での意志決定技法である。なお評価基準は2段階以上になることもある。あまり意識されないが、よく考えると我々が普段行っている意志決定のプロセスそのものである。
 AHPのグループ演習では学生に、次の点を強調している。
*問題の構造(上記@)についての合意形成が、まず非常に重要である。@の合意形成プロセスに参加できない人は、たとえ問題の構造自体には賛成でも、「自分の知らないうちに決定したのは腹が立つ」こと。
*「意見の違い」には、上記@、A、Bの3つのレベルがあり、そのことの認識が、合意形成を促進する可能性があること。

2)ISM

 ISM(階層構造化法;Interpretive Structural Modeling )とは、問題の階層構造そのものを決めていく技法である。階層構造がわかりにくい問題が対象となる。階層構造は、
@問題に関連した要素の抽出
A要素間の因果の有無(要素1は要素2の原因か結果か無関係か)をペア比較し、要素間の因果関係の行列(関係行列)を作成
B関係行列から階層構造が数学的に決定
という手順で決定される。

3. 演習の進め方

1)成績評価
 出席30点、レポート70点。なお遅刻・提出遅れの場合の減点基準を明確にした。
2)技法自体の説明
 「合意形成技法T(末石教授)」で一通りの説明がなされるが、本演習では具体的方法を詳しく説明した。
3)練習問題による演習
 技法を理解させるための練習問題を、解かせた。
4)グループごとの演習
 ここからが本番である。6人ずつ7グループに機械的に分け、各グループごとに演習させた。
 AHPを2回、ISMを1回、計3回行った。1回あたり3週を費やした。最初の2週がグループ内での演習、3週目がグループごとのOHPでの発表及び質疑である。
 1回目はAHPについて、「下宿先の選定」という問題に統一して全グループが行った。身近な問題でやりやすいという理由でこの問題にし、問題が同じでも評価基準や選択肢はグループによって必ずしも同じにはならないことを理解させるために統一問題にした。なお1回目終了時にグループを再編成した(2回目終了時も同様)。いろいろな人と合意形成の練習をすることが有意義であるからである。
 2回目は、AHPについて、環境問題という大枠のなかで、問題設定からグループごとに任せた。学生が設定した問題は、ごみ最終処分場の建設場所(2グループ)、ごみ焼却場の建設場所、ごみ分別収集の種類の決定、緑地公園の設定場所、オゾン層破壊防止対策、新規発電所の発電方法などである。問題―評価基準―選択肢の例は下記の通りである。
 3回目はISMについて、問題設定は環境問題に限定せずに、各グループに任せた。学生が設定した問題は、たまごっちの人気はなぜか?、高齢化社会(介護)、琵琶湖の水質汚濁問題、排ガスによる大気汚染、諫早湾の干拓問題(2グループ)、道路渋滞の起こる原因、である。問題と関連要素の例は下記の通りである。

4. 学生の評価

 授業の最終日(34名出席)に、授業の点数(100点満点で何点か)、授業で良かった点、改善すべき点を学生に書いてもらった。全て無記名である。その結果は下記の通りである。

1)授業の点数

 最高100点、最低50点、平均90点。

2)授業で良かった点の例。

*グループ内作業によって、普通に講義を受けるよりは授業に集中できた。実際に自分たちで問題を考えて技法を使うのが面白かった。
*自分と他人の考えの違いがわかること。
*各グループごとに課題に取り組んだので、色々な意見やアイデアが出てきてよかった。AHPやISMは名前を聞いただけではピンとこなかったが、実際にやってみて、自分のものにできたのでよかった。
*成績評価が明瞭でわかりやすかった。

3)授業で改善すべき点の例。

*他グループの発表はただなんとなく見ているだけで終わってしまう気がするので、その時間のレポートとして、全員に各班の評価のレポートを出してもらうようにするといい。

5. 今後の改善点

 上記「改善すべき点の例」の1つ目は、早速来年実施したい、ありがたい提案である。2つ目は、相反する意見があり、検討中である。3つ目は、追加書きを丁寧・太い大きな文字で行うことで改善したい。なお、グループ演習において、討議にほとんど参加しない学生が散見された。学生同士、全員がお互いに親しいわけではなく、逆に仲が悪い組み合わせもあるので、むずかしいところだが、来年は討議への参加を促す予定であり、その方法を検討中である。